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此処は、境界線。
ここの谷を越えたら『向こう側』に行ってしまう。
「貴方は、普通でも障害者でもないのよ」
ならば、私はどうすれば良いのだろう。
障害者でもない、けれど普通でもない―そう言われたって、只戸惑うだけだ。
「典子ちゃんって何か、いつもズレてるよね」
「解る解る。私の話聞いてないのかなって思っちゃう」
空気は読んでいる。相手に失礼のないように話しているつもりだ。
だけど私の言葉は、いつも何処か周囲と浮いてしまうのだ。
「空気読めないっていうか。勉強は出来るのにヘンだよねー」
「先生も典子ちゃんばかり甘やかしてズルいよねー」
教室に入れば聞こえてくるクラスメイトの言葉。
解っている、十分過ぎるほど解っている。私が『周囲から浮いている人間』
であろうことには。だけど、理解したところでどうすれば良いと言うのだろう。
「典子ちゃんは一人が好きなのかい?」
遠足に行けば必ず集団から外れ、無駄に面倒見の良い教師に話し掛けられた。
親切心からだったからなのかもしれないが、当時思春期の私にはそれがただただ、恥ずかしかった。
「別に。綺麗な鳥がいるから見に来ただけ」
ごまかして立ち去ると、教師は後をついてきた。
イジメを受けているのか、家庭で何かあったのかと根掘り葉掘りしつこく聞かれた。
「私は、一人で文章を書いたり何かを研究しているのが好きなので」
と言うと、更に怪訝な表情を浮かべながら私に同じ事を尋ねた。
一人で過ごすことができない・みんなと一緒に同じ時を過ごさねばならない。
学校は、遠足は私にとってただ苦痛の場所だった。
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