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同時期、私は医師から『広汎性発達障害である』との診断を受けた。
ネットで障害について調べ、対処法などを医師に尋ねた。
(…発達障害って、『障害』なのか?)
ネットや人から発達障害について聞くたび、何度もそんな想いが胸を掠めた。
確かに私は医師から『発達障害』という診断を受けている。
だけど、それは社会や世の中が決めた事で、もう少し優しい世の中だったら、
私達『障害者』は障害者ではなくなるのではないか?
そんな想いが何度も何度も、胸を揺さぶった。
「ちょっと。またさっき私が指示した事忘れたの?
いい加減にしてよ、こっちだって毎日忙しいんだからね」
「典子ちゃんって、ちょっと何かズレてるし…ねぇ?」
コミュニケーション能力主義/実力重視の世の中。
かつてあった、発達障害者向きとされる、工場や清掃などの仕事は
機械に代わってなくなった。
もし、ほんの少し世の中が優しければ。
私達は発達障害者じゃない、『普通の人間』になれる。
発達障害じゃない、普通の人だって今の世の中は辛く、苦しい筈だ。
(―それに、私は友達と遊ぶことより小説書くことの方が好きなのに」
母も学校の教師も、私が一人で遊んでいる所を見るといつも叱った。
そして『児童相談所』なる所に連れていかれた。
「学校で嫌な事があるの?先生、怒らないから話してちょうだい」
顔面にべったり笑顔を張り付けて心理士の先生は私にそう尋ねた。
悩みなどない、苦しいことなどない。ただ一人で小説を書きたいだけだ。
「やっぱり心が病んでるのね。無理もないわ、友達から外されて一人ぼっちで。
でも私は貴女を仲間外れにしたりなんかしないわ。ねっ、約束するわ」
自信満々の表情でこちらを見遣る心理士の先生。
首を振るのも怖く、ただ曖昧に相槌を打って時が流れるのを待っていた。
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