生命と無生命

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 ここで,生物学における「生物」の定義を挙げておこう。それは以下の3つである。 ①自己増殖能力を持つ  これは,有性生殖,無性生殖を問わない。雄雌の交尾によって出来る子孫は,自己の複製ではないが,これは子孫の遺伝的多様性を高めるためのものである。そのため,本質的には自己の遺伝子を次世代に残すという点で無性生殖と変わらない。  納得いかなければ,虫で置き換えてみてもよい。カブトムシのメスとオスが交尾してできるのはカブトムシだ。クワガタムシが出来ることはない。よその夫婦の子どもと見比べても,どっちもカブトムシ。遺伝的差異など突然変異を除けば大した差にはならない。 ②代謝能力を持つ  簡単に言えば外からエネルギーを手に入れ,それにより自己の機能を維持することである。動物における食事はその代表的な例で,食べなければ死んでしまう。植物では光合成が有名だ。もっと小さな生き物では化学物質を取り入れ,化学反応を起こしてそのエネルギーで活動している(食事も光合成も結局は化学反応によるエネルギーの獲得と言えるが)。 ③生体膜を持つ  自己と外の世界とを隔てる境界となる構造を有するかどうかということである。至極簡単なことだと思うので,詳しい説明はいらないと思う。これが無いと,①も②も満たすことが難しくなる。  このほかに,「環境の変化に適応しようとする」などを含む場合もあるが,割愛することにする。  このことから,RNAやDNA単体では生物とはみなされないし,賛否あるかもしれないが,精子や卵子といった配偶子も生物ではない。 もちろん,よく言われるようにウィルスも③を満たし,①も部分的には満たすが,②を満たさないので生物ではないということになる。
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