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前置きがずいぶんと長くなったが,ここからがようやく本題である。
考えても埒が明かないので,私は人工的に生命をつくってみることにした。
これは,人工授精やクローンの生成というものではなく,完全に,全て最初から人工物として作る,すなわち「試験管の中で作られた生命」の誕生を目指すということである。
人工生命の前例は,実は存在する。すでに試験管の中でウィルスが作成され活動(と言ってよいのかわからないが・・・)出来ることが知られている。
しかし,私が目指すのは生命を持つ生物の生成である。
知りたいのは,生物と全く同じ分子構造の物質を作った時,そこに生命は存在するのかということだ。
以下にその経過を記しておく。
初めは,単細胞生物のような単純なものから始めた。
原核生物では,DNAを完全に再現し,全く同じ構造の細胞膜を作った。
結果は,生物とはならなかった。
どこかで少し間違えているのかもしれないと思い,何度も挑戦したが上手くいかなかった。
私の研究は早速頓挫した。
何か変化を期待して顕微鏡を覗く私の横を,どこから入ったのか,小さな虫が飛んでいた。
こんな小さな虫よりもさらに小さい生物さえ,私は作ることが出来ないのかという憤りが生じ,その怒りを虫にぶつけ,叩き殺した。
次に顕微鏡を覗きこんだとき,私は奇妙なことに気が付いた。
動いていた! 無数のサンプルのうち,5分の1程度だが,確かに動いていたのだ。
実験はひとまず成功だ!人工生命,人工生物が誕生した!!
しかし,手放しで喜ぶわけには行かなかった。
なぜ,突然生命が宿ったのか。そもそも,その生命というのは何なのか。
私の怒りと関係するのだろうか。それとも,虫を叩いたときの衝撃が伝わったのだろうか。
何度顕微鏡を覗きこみ続けても,それ以上の変化はなかった。
その日は,愛猫のロザリンドと祝杯を挙げた。
さすがに猫に酒を飲ませたりはしなかったが。
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