生命と無生命

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 その翌日から,私はひとまず次の段階へ進むことにした。 真核生物で単細胞のものを作ってみた。  原核生物に比べて段違いに構造が複雑で,一つ作るだけでも相当な時間が必要になった。 しかし,これが成功すれば多細胞生物における期待が大きく高まる。 何としてでもやり遂げたい。  一つ作り終えたのを機に,前に作った原核生物の様子を見たところ,大繁殖をしていた。 完全に成功のようだ。  真核生物の方はやはり反応が無かった。 あれだけ複雑だと,どこかで手違いが起こっていても何らおかしくはない。  今日はこの辺で切り上げよう。  このペースでは,研究の結果が出るよりも先に私の寿命が来てしまうかもしれないが,根を詰めても仕方がない。極度の集中を要する作業に無理は禁物だ。  研究フロアのある地下から,1階へ続く階段を上ろうとしたとき,私は研究室の机にペンを忘れてきたことに気が付いた。 だだっ広い研究フロアを戻るのは気が引けたが,あれが胸ポケットに刺さっていないとどうも落ち着かず,仕方なく取りに戻った。  研究フロアの前の自動扉が開いたそのわずかな隙に,ロザリンドが私の股下をくぐってフロアの中に入っていった。 危ないし,実験動物以外の動物を入れてしまうと色々と支障が出るのですぐに追いかけた。  私の座っていたデスクのすぐ近くにロザリンドが座っていた。  あやしながら抱え上げようとしたそのとき,彼女が何かを咥えているのに気が付いた。  ネズミだった!  研究フロアに立てこもりで,まともに上へ行かなかったので屋敷に住みついていたのかもしれない。 ロザリンドはこいつを追いかけてここに入ってきてしまったようだ。 私はペンを胸ポケットに刺すと,愛猫を抱えて研究フロアを後にした。  と,なっていれば危なかった。  私はペンを胸ポケットに刺した後,何となく顕微鏡を覗いてみた。  動いている! 生命の宿った真核生物がいる!  謎がだんだんと解けてきた。
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