「重なる謎」

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これ以上ここで調査をしても何も分かりそうにないということで、 撤収が決まった。結構なコストをかけていただけに、 殆ど収穫らしい収穫も無く、気の重い撤退だった。 「元気出して下さいよ、  こういう事もよくあるんじゃないんですか?  この星では―」 アジートに帰りいつものデスクワークに 戻った二人だったが、すぐにジグがボーっと考え込んで しまうので、テテが声をかけていた。 「何があってもおかしくない、か。  まぁその通りなんだが…  ついこの前、洞窟の幽霊の件でモヤモヤしてたのを  何とか納得した所だってのに、またこんな事になるとは」 「あまり気に病むと体に毒ですよ?  いいじゃないですか、解らないものは解らないままで」 「それは解っているんだが…うーむ」 「解ってないじゃないですか…  もう、ジグさんが以前言ってた事おぼえてます?」 「…?何か言ってたか?」 「ほら、私が調査の帰りに幽霊を見たって騒いだ時。  私の恐怖を和らげようとして、言ってくれたじゃないですか?」 「何て言ったっけ?」 「幽霊は雷や地震と同じで、只の自然現象で  この先科学で解明される、そう思えば怖くないだろうとかなんとか」 「ああ、あれな。  雷の原理を知らない大昔の人は、今の俺達が幽霊を怖がるのと  同様に雷を恐れただろう、とか言ったやつか。     そんなこともあったなぁ。  あの時はあの青く光る植物の森でブラウを捕まえて、  ケインとオーレンが倒れ、二人で…」 「そう、それですよ。  何か私達の知己の及ばない自然現象があって、  それがあの状況を作り出したと思いましょう。  その原理が解らないから今回の件はモヤモヤしてますが、  いつか誰かがそれを解明してくれます。  我々は記録を残し後の世代に託す、  それで十分ではないですか?」 「青く光る…植物?  そうだ、あの植物…ひょっとして…」 テテのいう事を聞いているのかいないのか、 ジグは虚空を見つめて考え事を始めた。 「あの時の草がどうかしましたか?」 「…いや、水源の方が印象強くてそっちばかりに  気を取られていたが、今回の件にも青く光る植物が  出て来たよな?」 ジグが見つけ、あそこは川だったのでは? と目星を付けた矢先、川が出現したので 後回しにしていた件だ。 「はい、そうですね。それが?」 「今回の植物は、恐らくあの出現した川の水が  原因で普通の草が青白く光る様になったのでは?  という話だったな?」 「はい」 「そして前回の森の植物も、何の変哲もない草が  なぜか青く光っていたが、  あっちは地面の方に何か原因があるのでは?という  専門家のコメントが付いていた…」 「みたいですね」 「前回と今回の青い植物、この二つには何か関連性があるのでは?  あのブラウの森の地面を詳しく調べれば、  何か出て来るかもしれないと思わないか?」 「言われてみれば…偶然とは思えませんね。  他ではまだ発見されてないみたいですし」 「もう一度俺達の提出した、あの森のデータを閲覧してみよう。  調査が進み、新たな情報が追加されているかもしれない」 「はい!」 テテは早速、自分のデスクに置いていたパソコンの キーボードを叩き始めた。 ジグも直ぐ隣に来て、一緒に画面を見るが… 「うーん、特に新しい情報は無いみたいですね」 残念ながら、最終更新日は大分前の日付のままになっていた。 テテが残念そうに画面のウィンドウを消そうとした時― 「……いや待て!!」 「な、何です?」 「この添付画像…これを見せてくれ!」 ジグは画面に表示されていた、サムネイル画像の一つを指差す。 テテはすぐにその画像を開く。 「これは…この森の衛星画像ですね。  これが何か?」 例の荒野にポツンと存在している、 あの森の全体像がよく解る物だった。 「この森の形…あの水源地にあった穴と、  同じ楕円に見えないか?」 「えっ?そ、そうですか…?  私にはよく解りませんが、楕円なんて皆同じような物なんじゃ?」 「試しに、あの穴の画像とこの森の画像を重ねてみてくれ、  多分殆ど同じ比率だと思う」 「解りました、ちょっと待ってて下さい」 テテは画像編集ソフトを立ち上げ、森の画像をコピペし、 自分達で撮ったあの穴の画像と大きさを合わせ、 半透明にして重ねてみた。 「これは…!確かに同じ比率の楕円です!」 「偶然か?確かに只の楕円だから、  偶然の可能性は低くないだろうが…  違うような気がする。勘だがな」 「でも、これが偶然じゃないとしたら、  一体どういう事なんでしょう?  この楕円に何か意味が?」 「そうなんだ、さっきからそれを考えている…  楕円と言えば何だ?何を連想する?」 「やっぱり…卵、ですかね?  後はお皿とか果物とか…  スポーツの競技トラックとか?」 「だよな、俺もその程度しか浮かばん。  意外と楕円形って身近に無いな。  それ以外だと…アルファベットのオー?  アラビア数字のゼロ?」 「眼鏡のレンズ?装飾品のロケットとかペンダント?  固形石鹸?キャンディ?」 「うーん、どれもピンと来ないな。  他に何か思いつくか?」 「えっと…うーんと…  あ!あれがありました、  この星に来る時に宇宙船内から見えて、  綺麗だなーって思ってたワープゲート!  あれも楕円ですね」 「「ワープ…」」 「「ゲート?」」 二人は同時に呟き見つめ合い、そして同時に気付いた。 「「それだ!!」」 ――――――――――――――――――――――――――――
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