25人が本棚に入れています
本棚に追加
/50ページ
【1】 血のついた服
物心ついた頃から、あらゆる能力に長けていた。
学問を修める力、財を築く力、同性を惹きつける力、異性を惹きつける力、闘いに勝つ力……挙げればきりがない。
高い背であろうと、高い身体能力であろうと、優れた頭脳であろうと、整った容貌であろうと、世の男性が望むものなら全て、産まれた時から手にしていた。
何をすればよいだろう。毎日を、そう考えながらぼんやりと過ごした。
私は満足していた。願いが、なかった。
執着にまつわる諸々の苦しみや妬みは、私には理解できなかった。
だが、「しかたがない」とも、思っていた。
人間の感情に関してのみ、私はほとんどのことを理解できなかった。産まれた時から、である。
最初のコメントを投稿しよう!