【1】 血のついた服

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 自分の身に起こったことを評価する為には、差異が必要である。「若い頃は苦労したが、大人になって成功した」といった風に。しかし、私は産まれた時から何も変わらなかった。  正の方向であれ、負の方向であれ、私の心が大きく動くことは、ただの一度としてなかったのである。(私を見る人間の中には常に、賞賛と妬み、愛情と憎悪が蠢いていたというのに。)  私には人が理解できなかった。しかし、それはしかたのないことだった。ずっと、変わることなく、そうだったのだ。自分の人生を評価する物差しを持たぬ者に、一体何が言えるだろう。  私は満足していた。この世でやるべきことは、最早何一つ無いように思われた。  だから、予感していたのだ。こんな時が来ることを。
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