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「そうか、エメくんはまだ字が読めないのか」
「ああ。だから学校に入れる前に、まず一年は幼稚園に入れねばなるまい」
「学校は俺たちと同じところに?」
「うむ……。初等部の受験は面接だけだから、間に合うとは思うんだが」
「あー、大丈夫だろ。あそこは親の名前で入れるようなもんだ。俺のせがれは腕っぷしばっかで頭の方はからっきしなんだが、ダメもとで受けさせたら入ったしな」
「それは……あまり愉快ではないが……」
権威主義、コネの文化は好きではない。しかし私もアッカスも通ったあの学校が、この王都、ひいては竜の国で最も優れた教育機関であることは疑えない。エメにも同じところへ通ってほしい。
……いや、こういう話はノエとも相談せねばならないだろう。あそこは寄宿学校だ。王都には通学生の学校もあるのだから。
「ま、エメくんは賢そうな顔してるし実力でも充分通るだろ! 大丈夫、大丈夫!」
アッカスは朗らかに笑い飛ばし、他の書類の説明もした。住民登録をすることで得られる恩恵がいくつかある。主にノエが聞くべきその説明は、ククが全て通訳してくれた。
それでこの関所での手続きは終わり。アッカスは丁寧にファイルまで用意してくれて、関所を出る私たちを見送った。「頑張れよ、ロワ。新婚生活はマジで短い。子どもが寝てる時間をよく把握して奥さんと熱い一夜をだな……」と無駄な話を私に耳打ちして。
そんなことは重要ではない。ノエと……など、いや嫌であるはずはないし寧ろ……。
「二人目ができたら俺に言えよ! また純血竜種で通してやるからよ!」
そんなことは……!
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