5. それぞれの時間

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5. それぞれの時間

 ロワとククを見送った後、すっかりすることがなくなってしまった俺は、とりあえず昨日もらってリビングに置いておいた花を窓辺に持っていった。窓を開けたところに花置き台が付いていて、背の低い柵もあるので落ちる心配もない。そこに置き、コップで少し水をやる。葉にかかった水滴が滑る様子をじっと見つめる時間は本当に穏やかで、俺は陽の当たる床に丸まったエメの隣に腰を下ろした。 「エメ、眠い?」 「んむぅ……」  時計は朝の七時半頃を示そうとしていた。森にいた頃は時間なんて気にしていなかったが、確かにまだ少し早い時間だろうか。ついでに季節も気にしていなかった。この竜の国で、入園の時期とはいつになるのだろう。穏やかな陽気が差し込んでくる朝は、夏でも冬でもなさそうではあるが。  毛布でも持って来てやろうと思って立ち上がろうとすると、エメが俺のズボンを軽く噛んだ。 「まま、いっひゃ、やらー……」 「毛布を取ってくるだけだよ、すぐ戻ってくるから」 「やらぁ……」  もぐもぐとズボンを咥えながら、エメは半分眠りながらぐずる。どうにも動けなくて、結局俺も横になって添い寝をした。  降り注ぐ陽光の中での微睡みに負けて、瞼が落ちるのは早かった。
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