2. ガロン家

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2. ガロン家

 関所から、ロワはタクシーを拾った。  タクシーといっても俺がよく知るような車ではない。馬車、というのがいいだろうか。車体を引くのは馬の身体に人間の胴体から上が生えた生き物。ケンタウロス……、と何かの絵本で見た。鉄に似た頑丈な素材で作られた車体には向かい合わせにベンチが備わっていて、俺たちはそこに座った。屋根は無く、今日の晴天が心地いい。  ケンタウロスは俺ににっこりと微笑むと、何かを話しかけてきた。分からない、と首を振ると驚いたような顔をし、ククの説明に納得するとまたにっこりと笑って俺に手を差し伸べた。求められるままに握手をする。久しぶりに人間と同じ手に触れた。力強い手だった。後でククから聞いたが、ケンタウロスは竜の国とは遠く離れた別の国の森に住む種族で、運び業に従事するためだけに、ごく少ない数ではあるがこの王都にやって来るのだそうだ。  珍しい種族なので、好奇の目を向けられることも少なくない。だから俺を気に掛けてくれたのではないか、と。
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