【ユーリスサイド】 罪と甘美な花の蜜(慰め)

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 マコトが目を覚ましたのは連れ帰ってきて一時間ほど後。  未だ媚薬に朦朧としながらも、俺を見つけて安堵し、黒い瞳に沢山の涙を浮かべた。  まるで俺の存在を確かめるように腕が伸び、俺の首に絡みつくとそのまま抱きついてくる。  俺は驚きながら、それを受け止めた。 「ユーリスさん…」 「すまない、遅くなって」 「ユーリスさん…」  謝罪の言葉しか出てこない俺に、マコトは嬉しそうに柔らかな音で名を呼んでくる。  俺の鼻にマコトの甘い匂いが絡みついて、体が燃えるように熱くなっていく。  そんな浅ましさに、俺は自身を叱責した。 「すまない、本当に。少し手間取って遅くなってしまった。あんな奴らに触れさせるなんて…」  謝らなければ。  思って口にすれば、マコトは涙に頬を濡らしながらも首を横に振る。  咎めの言葉がない事に安堵しつつも、俺は俺自身をなじっている。  マコトの体は未だに熱い。  潤んだ黒い瞳、薄く開く唇、上気した肌、触れる体の震え。何より薄れない匂いは発情しているのかと思えるほどに濃い。  竜人族は発情期以外でも子を残せるし発情するが、その季節になると余計に酷い。  好ましい相手の匂いが鼻先について、常に体を熱くする。     
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