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とうとう、人族の国を離れて一番の難所、峠越えとなった。
裾野に広がる森もまた、大型のモンスターが出る。
俺は首からかけていた笛を、マコトに手渡した。
この笛は同族にのみ聞こえる笛だ。
助けを呼ぶものであると同時に、これを持つ者との関係を示している。
この笛自体が、俺の魔力を固めて作っている。それを持つ者は俺の親しい…恋人か、それに準ずる者だと周囲に示している。
例え俺に何かがあったとしても、マコトが無事でいれば俺の屋敷に届けてもらえる。
そこで、マコトは安楽に暮らせる。
マコトは不思議そうに笛を太陽にかざしたりしている。その姿が愛らしくて、俺は笑った。
「ここまで来れば同族がいるかもしれない。何かあったらこれを吹いてくれ。同族がいれば、助けてくれる」
「でも、それならユーリスさんが…」
「俺はいざとなれば竜に戻って一声鳴けばいい。俺達の咆吼は一山越えて同胞に聞こえるからな」
「そうなんだ…」
俺の力を込めた笛を、マコトは大事そうに握りしめた。
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