3298人が本棚に入れています
本棚に追加
/324ページ
この日は何事もなく野営を張れた。この森でモンスターに遭遇しなかったのはある意味奇跡的だ。
隣に寝るマコトは、テント生活に少しずつ慣れた。最初の頃のようにはしゃぐことは無くなったが、それでも少し楽しそうに足元が弾む事がある。
耳慣れない鼻歌を聴きながら、俺は時間を過ごす事が心地よくなっていた。
マコトの体力で峠越えは辛いだろうと思っていた。
既に人の国から離れている。竜化すればいいのだが、マコトは大きな姿に恐怖心がある。
俺は黒龍族の中でも体が大きい。親友のガロンも大きいが、あれは種族として大型種だ。
黒龍は中型にも関わらず、竜化した姿は大型種と同じくらいある。
そんな俺を見て、マコトは怯えるかもしれない。
恐怖の目で見られるのは、とても耐えられなかった。
足元の悪い道を歩き、先に立ってマコトを導いていく。
なんなら背負ってもいいのだが、多分マコトは乗ってこない。
意外と頑固なんだと最近気づいた。
だから前を歩き、マコトが辛そうな所では腕を引き上げている。それですら、マコトは申し訳なさそうにしていた。
半分も登らない所で、今夜は野営を張った。マコトの体力が限界だ。
最初のコメントを投稿しよう!