【ユーリスサイド】 離したくない

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 疲弊した彼にヒールをかけて、怪我がない事を確認して、食事の用意をする。流石にタープは張らずに結界を二重に張り、テントの中で食事をした。  マコトの作った『おにぎり』というのは、携帯にとても便利な形をしている。  米はあるがパン食の多い世界で、これは少し驚くメニューだ。だが、程よい塩加減と焼いた鮭が美味しい。 「マコトは何を食べているんだ?」 「梅だよ」 「梅?」  見れば赤い食べ物が入っている。だが、竜人族の中ではあまり見た事がない。  疑問に思っていれば、マコトがそれを差し出してくる。食べていいと言っているようだ。  間接キス…なんて思って少しドキドキして赤い部分を食べた俺は、その刺激的な味に驚いてもんどり打った。 「大丈夫!?」 「酸っぱい!」  じわっと唾液が出てくるような強い酸味に俺は泣きそうだ。竜人族には強すぎる酸味だ。  それでも絶対に出したくない。  どうにか飲み込んで息をつくと、マコトが水を持って来てくれた。 「大丈夫?」 「驚いた…」 「苦手なんだね。ごめん」 「あぁ、いや…」  興味があったのは確かで、求めたのも俺だから。  でも、マコトは申し訳なさそうだ。俺は笑って、ニッコリと笑う。 「美味しかったよ」  言ったらマコトは顔を赤らめて「無理して」と俺に可愛い顔で怒った。
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