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自分がバカだとは知っていたけれど、ここまでとは思わなかった
ユーリスさんの屋敷は王子様の家というのに相応しいものだった。
白い外壁の二階建ての建物は、よく知っている豪華なもの。それに、青い屋根がある。部屋数だって一体いくつだよ。絶対に使ったことのない部屋沢山あるだろ。とツッコんだほどだ。
しかも庭がまた。門から屋敷の玄関まで徒歩五分は絶対にかかるよね? という広い前庭に、低い生け垣なんかが丁寧に手入れされている。
俺と傷ついたユーリスさんを運んでくれた赤いドラゴンはその前庭に降りて、パニックになっている俺の代わりに状況を屋敷の人に伝えてくれた。
治療されるユーリスさんを、俺は少しだけ見ていた。
俺を庇って脇腹が抉れていたのを見て、怖くなってひたすら泣いていたのを屋敷の人に宥められ、赤いドラゴンから赤髪の少年に戻った彼がずっと側で励ましてくれた。
周囲の人はみんな「大丈夫」と言ってくれたけれど、俺にはそうは見えなかった。
だから怖くて心配だったけれど、本当に大丈夫だった。
魔法って改めて凄い。
治療魔法の得意なお婆さんが『ヒール』を唱えただけで、傷ついた体は綺麗になった。
俺は役立たずだ。色んな人に迷惑をかけるばかりで、何も返せていない。
大事だって思っているユーリスさんにあんな深手を負わせてしまったのに、俺はその体を癒やす事もできないんだ。
俺は屋敷の中に一室を借りて、そこでしばらく生活する事になった。
側にいることを疑問に思っていたけれど、色んな人が引き留めてくれて、俺もこのままお礼の一つも言わないで去るのはさすがに失礼だと思い直して従った。
でも本当は、ここにいたかったのかもしれない。
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