3302人が本棚に入れています
本棚に追加
/324ページ
脳みそが揺れたのもそうだし、体の中にダメージがあった。ある意味見える怪我をしたユーリスさんよりも酷いと言われてしまった。
治療され、ベッドに横になっても回るような目眩がして、それに酔って何度か吐いた。
胃は空っぽで、口の中が酸っぱくなってしまう。
当然食べれるわけもなく、今朝ようやくスープを頂いた。
「人間って、やっぱり弱いのな」
「そうみたいだね」
「うんうん。マコトも早く元気にならないと、ユーリスが起きて心配するからさ」
キラキラ光るお日様みたいな笑顔に、俺は曖昧に笑った。
ユーリスさんはまだ眠っている。
命に別状があるわけではないけれど、出血が少し多かったみたいだ。
今朝も見に行ったけれど、静かに寝ているばかりだった。
命を救われたのは、これで三度目。一度目は森で、二度目は売られそうになって、三度目は昨日。なのに俺は、されるがままだ。
「マコト?」
ダメだ、俺の涙腺はこの世界で急に崩壊を始めたらしい。気づけば涙が伝っていた。
オロオロしたロシュくんが服の裾で目元を拭ってくれる。見た目は俺よりいくつか下なのに、今は頼もしくて仕方がない。
「大丈夫だって、本当に。ユーリス強いんだからさ、平気。明日には目が覚めるって」
「…うん」
俺は思っていた。助けてくれたユーリスさんに、何を返せるのかって。
最初のコメントを投稿しよう!