自分がバカだとは知っていたけれど、ここまでとは思わなかった

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 彼の言葉を遮るようにして、俺は少し強く名を呼んだ。  驚いたような黒い瞳を見ながら、俺は必死で考えていた事を口にした。 「ユーリスさん、聞いてください。実は俺、一つだけスキルがあったんです」 「え?」  疑問そうに、少し驚いた様子でユーリスさんは俺を見ている。その視線が少し痛い。  一日かけて決意したのに、舌が鈍りそうだ。  怖くないなんて言わない。全部が未知なんだから仕方がない。  異世界も未知だけど、生活自体は前の世界とそれほど変わらない。まだ受け入れられる。  けれど、同性とのセックスや妊娠出産なんてのは、明らかに経験のしようがない。  痛いって聞くし、出産は命がけなんてのもテレビで聞いた事がある。怖くて足が竦む。  でもそれ以上に、俺は何かを返したい。ただ、その一心だった。 「俺の持っているスキルは、『安産 Lv.100』です」  伝えた途端、ユーリスさんの黒い瞳が驚きに見開かれ、息を呑んだのが分かった。  彼はちゃんと分かってる。俺の存在は、待ち望んだものなんだ。  このままでは王家の血筋が絶えてしまうかもしれないと言った彼にとって、俺は希望になれるんだ。 「俺、ユーリスさんの子供を多分産めます」 「マコト…」 「経験はないけど、スキル高いから。だから…」     
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