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一晩泣きはらして、少し過呼吸っぽくなりながらも俺は少し冷静になった。
冷静になったら、本当に救いようがなくなった。
スキルを聞いた時に、俺は思ったはずなんだ。
ユーリスさんに商売人のような目で見られるのは嫌だ。子供を産む道具のように扱われるのは嫌だって。
なのに昨日の俺は自分から、そうなろうとした。
俺は何でも良かったんだ。
ユーリスさんの側に居続ける為には有益でないといけないって思ったんだ。その為にスキルを利用しようとした。俺にとっての武器は、それしかないから。
バカだ。
ユーリスさんにだって気持ちってものがある。相手に求める条件がある。俺みたいな役立たず、好みのはずはない。
前に一度触れてくれたのは、俺が媚薬に犯されてどうにもならない状態だったから。
憐れんでくれたのに、勘違いした俺が悪い。
自分にそんな価値なんてない。
親にすら捨てられた奴が、誰かの特別になりたいなんておこがましいんだ。
俺は、ユーリスさんの事が好きなんだ。
これが一晩泣きはらして出た、俺の中の純粋な気持ちだった。
「マコト」
扉の外で声がする。俺の肩はビクリと震えた。
コンコンとノックをする音にも、俺は震えた。
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