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どんな顔で合えばいいか分からない。
どんなふうに言い訳したらいいか分からない。
何でもないように笑って「なんですか?」なんてきっと言えない。
何度かノックされたけれど、俺は動けないままベッドの中で丸くなった。そのうちに、気配が消える。それに安堵するなんて、俺は恩知らずだ。
夕方、俺は一つ決心をして着替えて屋敷の厨房に向かった。
中ではコックさんが料理を作り終えていた。
「おや、マコトさん」
「あの、厨房お借りしてもいいですか?」
俺の申し出に、コックさんは不思議そうな顔で首を傾げた。
「旅の間、ユーリスさん俺の料理気に入ってくれたみたいなので、何か作れたらいいなって。俺に返せる事って、このくらいしか思いつかなくて」
「そりゃいい。ユーリス様も喜びますよ」
コックさんは嫌な顔一つしないで、俺に厨房を貸してくれた。
何を作ろうか考えて、厚焼き卵と鳥唐揚げと金平ごぼうを作っておいた。
「手慣れてますね」
「好きなんです、料理」
作り上げて、それを皿に乗せて渡す。
お礼を言った俺は部屋に戻ってマジックバッグの中を確かめた。
作り置きの料理はまだ残っている。買ってもらった服や、念のためにと渡されたお金。
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