自分がバカだとは知っていたけれど、ここまでとは思わなかった

10/12
前へ
/324ページ
次へ
 どんな顔で合えばいいか分からない。  どんなふうに言い訳したらいいか分からない。  何でもないように笑って「なんですか?」なんてきっと言えない。  何度かノックされたけれど、俺は動けないままベッドの中で丸くなった。そのうちに、気配が消える。それに安堵するなんて、俺は恩知らずだ。  夕方、俺は一つ決心をして着替えて屋敷の厨房に向かった。  中ではコックさんが料理を作り終えていた。 「おや、マコトさん」 「あの、厨房お借りしてもいいですか?」  俺の申し出に、コックさんは不思議そうな顔で首を傾げた。 「旅の間、ユーリスさん俺の料理気に入ってくれたみたいなので、何か作れたらいいなって。俺に返せる事って、このくらいしか思いつかなくて」 「そりゃいい。ユーリス様も喜びますよ」  コックさんは嫌な顔一つしないで、俺に厨房を貸してくれた。  何を作ろうか考えて、厚焼き卵と鳥唐揚げと金平ごぼうを作っておいた。 「手慣れてますね」 「好きなんです、料理」  作り上げて、それを皿に乗せて渡す。  お礼を言った俺は部屋に戻ってマジックバッグの中を確かめた。  作り置きの料理はまだ残っている。買ってもらった服や、念のためにと渡されたお金。     
/324ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3315人が本棚に入れています
本棚に追加