自分がバカだとは知っていたけれど、ここまでとは思わなかった

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 それらがちゃんとあることを確かめて、テーブルの上に置いた。  そして預かっていた黒い水晶の笛をその脇に置いた。 「ごめんなさい」  俺に出来るのって、結局料理しかなかった。純粋な俺の力で出来る事で、せめて喜んでもらいたい。俺に返せるせめてもの事だった。  俺は少し散歩したいと言って屋敷から出て、戻らなかった。  一本道を下っていけば町に辿り着くのは聞いていたし、ロシュくんから国の中にはモンスターはいないって教えてもらった。だからただ歩いていけば、どこかに行けるんだ。  屋敷が遠くなっていく。  俺の心はひび割れたみたいに痛んだし、涙が溢れてきたけれど、振り返ったり足を止めたりする事はなかった。  甘えすぎていたんだ、やっぱり。ちゃんと自分で生きられないとダメなんだ。  仕事のえり好みなんてしないで、辛くてもやればよかった。喜んで就活するって言えば、ユーリスさんだって頷いてくれたはずだ。  それに、側にいる事が辛い。今までのようになんて無理だ。  体つかって迫って、拒絶されて、好きだと気づくなんて間抜けすぎるけれど、だからこそ側にはいられない。  今までの惰性でお世話になることだけはしたくない。     
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