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【ユーリスサイド】 悲劇の前夜
目が覚めた時、見慣れた室内に安堵した。
とりあえず、屋敷に戻ってきた事が分かったからだ。
直ぐに婆がきて、俺の傷を診ていく。その間に、俺はマコトの事を聞いた。
マコトは傷こそなかったが、内部への衝撃は抑えられなかった。頭痛に吐き気で食事がままならず、治療をしたと聞いて俺は自分を責めた。
もっとちゃんと守れなかった事。
そして、こんな事なら竜化してしまえばよかったと。
結果論なのは分かっている。あの時の俺はそれが出来なかった。
恐れているのは今も同じ。
不安を感じているだろうマコトを前に、更に恐れまで向けられたくない。
「まずは平気ですが、流れた血の分だけ無理はできませんぞ。数日は静かにお過ごし下さい」
「すまない。婆、マコトは今起きているか?」
「呼んでおりますぞ。随分と心配していたようですからな」
婆はそう言って下がった。
早く会いたい。その気持ちばかりが急き立ててくる。
マコトの顔を見て、無事を確かめて、守れなかった事を謝って、これからの事を話したい。
そう思っていたのに、入って来たマコトは今にも死んでしまいそうな青い顔をして、緊張に震えていた。
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