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どうしてそんな顔をしているのか、俺は戸惑った。
それでも俺まで不安な顔をすれば、マコトは自分の感情を押し殺してしまうだろう。
気丈に振る舞うかもしれない。
俺はにこやかに迎えた。内心は酷く不安で、彼の表情の理由を知るのが怖かったが。
「マコト」
「ユーリスさん」
名を呼べば、マコトは途端に泣き出してしまう。驚いて、今にも倒れてしまいそうな体を抱きしめてしまいたくて立ち上がろうとしたら、マコトは手でそれを制して涙を拭いながら近づいてくる。そして、手の届く位置にある椅子に腰を下ろした。
「ごめんなさい、安心したらなんか」
「心配かけてしまったんだな」
「いいえ」
薄く笑みを浮かべるその顔は、心からの安堵を感じる。
未だ流れた涙を服の袖でゴシゴシと拭うから、目元が擦れて赤くなっている。
いや、そうじゃなくても目元が赤い。いったいどれだけ泣いてくれたのか。
ほんの少し腫れた瞼を、俺は苦しく見ていた。
「怪我、痛みませんか?」
「あぁ、痛みはない。婆に聞いたが、君の方こそダメージが強かったみたいだが。体調は、大丈夫なのか?」
「はい、おかげさまで」
そう言った言葉に偽りはないだろう。今日は食事もちゃんと食べられたと聞いた。
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