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森の側で生活している夫婦は、小さな子供が近くに蹲っているのを見つけて食事を出し、馬屋に泊めたという。
汚れているから家には上がれないと言って、遠慮したらしい。
干し草でベッドを作り、毛布を彼にあげたと聞いた。
「森を狙って動いているけれど、迷っている。だからこそ、出没地点も目的地もはかれない。今現在、どこにいるのか検討がつかない」
ゆっくりと移動しているのは、地図の印からも分かる。けれど街道沿いを歩いていない。森の中を進んでいる。町も通っているのかもしれないが、寝泊まりの場所はいつも野外だ。
「でも、ここから先がまた掴めない。見た目が他の黒龍と酷似しているから、ぱっと見では判断がつきませんね」
「しかも腕輪の認証のない小さな村や町を経由していそうなコースです。今どこにいるかも、判断ができませんね」
転々とする足跡。俺はそれを見て、マコトに目的地なんてないんだと思った。
当然だ、マコトは地図を持っていないし、人族が方角を見るのに使う方位磁針という道具も持っていない。
ただ、俺の屋敷から遠ざかっている。それだけが目的なんだ。
それでも、生きている。目撃者がいるなら、マコトはちゃんと生きているんだ。
不埒な者に攫われていいようにされているのでも、不慮の事故にあっているのでもない。
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