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なんか凄く、怠いし体が重かった。
ユーリスさんが戻ってきたのは、わりとすぐ。倒れている俺を抱き上げてベッドに横たえてくれた。
その直ぐ後に入ってきた婆さんは、俺の体を丁寧に診察してくれた。
「確かにお子が宿っております! おぉ、何という事。本当に、おめでとうございます」
涙ぐんで俺の手を揉んでいますけれど、俺は今それどころじゃない。
気持ち悪い。水飲んでも吐きそう。どうして…。
「具合が悪いようだが」
「悪阻ですな。サッパリとするレモン水をお持ちしましょう。食べられそうなものはありますかな?」
「今は…」
「果物をお持ちしましょう。後、この部屋に匂いが入らぬように結界をかけましょう」
「匂い……」
ぼんやり思いだしている。
そうだ、パンの匂いだ。俺、パン好きなのにちょっとショック。
聞いた事あるよ、好きなのに食べれなくなるんでしょ?
どうして俺がこんな事知ってるかって?
近所の奥さん連中に俺が気に入られていて、お菓子欲しさにチビの頃からお茶会参加してたからだよ。
大きな手が俺の頭を撫でてくる。切れ長の瞳が気遣わしく細くなる。
俺も辛いけど、ユーリスさんも辛そうね。なんか、ちょっと楽になった。
「これ…どれくらい続くの?」
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