胃袋を掴むのはどこの世界でも必須項目なのか

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 人のいい初老の主人は首を傾げ、そしてユーリスさんの後ろに半分隠れた俺を見つけて目を丸くした。 「おや、彼は?」 「迷いの森で知り合ったんだ。異世界人で、あの森に落とされたらしい。もう少しでタネヤドシの餌食になるところだった」 「それは、災難でございましたね。いやはや、それにしても異世界人とは珍しい」  そう朗らかに言うばかりで、老人はとても親切そうに笑った。 「ですが、最初に出会ったのがこの方だったのは幸運ですよ。この方は紳士ですし、何より腕が立つ。存分に甘えても大丈夫ですよ」 「ははっ、そうも行かないですけど…程々に」  あんまり頼ると俺がダメ人間になる。  これでもそれなりに苦労してきたんで、そう簡単に甘えるとかできません。  今現在ももの凄く心苦しいですから。  ユーリスさんは苦笑して、マスターの老人から鍵を受け取った。  部屋は二階の角部屋。室内はとても清潔で、けっこう広かった。 「明日は朝から買い物になるから、今日はゆっくり休む。歩き疲れただろ?」 「ははっ、ちょっと」  意外と距離があったし、何より俺とユーリスさんではコンパスに違いがありすぎる。  腰から下が長いんだよ、やっぱり。  俺は平均だと思ってたけど、それは思い違いだったのか?     
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