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「風呂もあるし、ベッドも清潔。荷物を置いたら先に食事にするか?」
「あっ、はい。あの、昨日で食料のストックが無くなったって言ってましたよね? それって、どうするんですか?」
俺はずっと思っていた事を聞いた。そして願わくば少しでも恩を返したかった。
俺に出来る事なんて本当に微々たるものなんだけど、それでもこの人が喜んでくれそうな事をしたかった。
「あぁ、そうだった。食材を買って、ここのキッチンを貸して貰って軽く作るか」
「あの、それなら俺が」
「ん?」
首を傾げて、ユーリスさんは俺を見る。俺の方はけっこう慌てて言いつのった。
「俺、家事はそれなりに出来ます。料理も、困らない程度には。なのでよければ、作らせてください」
「いいのか? けっこう手間だが」
「俺がやらせて欲しいんです。俺がユーリスさんに返せる事って、他に思いつかないし。それに、出来れば俺も何かをしたいですから」
食い下がってみた。
お返しをしたいという純粋な気持ちもあるが、俺はこの人の喜ぶ顔が見たい。
笑うとちょっと、精悍さが薄れて子供っぽい無邪気さがある。
そういう顔をしてもらえると、なんだか「俺も何かできるぞ」という気持ちになるのだ。
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