胃袋を掴むのはどこの世界でも必須項目なのか

6/15
前へ
/324ページ
次へ
「風呂もあるし、ベッドも清潔。荷物を置いたら先に食事にするか?」 「あっ、はい。あの、昨日で食料のストックが無くなったって言ってましたよね? それって、どうするんですか?」  俺はずっと思っていた事を聞いた。そして願わくば少しでも恩を返したかった。  俺に出来る事なんて本当に微々たるものなんだけど、それでもこの人が喜んでくれそうな事をしたかった。 「あぁ、そうだった。食材を買って、ここのキッチンを貸して貰って軽く作るか」 「あの、それなら俺が」 「ん?」  首を傾げて、ユーリスさんは俺を見る。俺の方はけっこう慌てて言いつのった。 「俺、家事はそれなりに出来ます。料理も、困らない程度には。なのでよければ、作らせてください」 「いいのか? けっこう手間だが」 「俺がやらせて欲しいんです。俺がユーリスさんに返せる事って、他に思いつかないし。それに、出来れば俺も何かをしたいですから」  食い下がってみた。  お返しをしたいという純粋な気持ちもあるが、俺はこの人の喜ぶ顔が見たい。  笑うとちょっと、精悍さが薄れて子供っぽい無邪気さがある。  そういう顔をしてもらえると、なんだか「俺も何かできるぞ」という気持ちになるのだ。     
/324ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3313人が本棚に入れています
本棚に追加