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そう言いながら煮っ転がしも一つ。実に美味しそうに食べてくれる。
ただ困ったのは、つまみ食いが本気食いになりそうな雰囲気があることだ。
「ダメですよ、これは今後の食事なんですから」
「あぁ、そうだったな。だが、本当に美味しい。マコト、もしも王都でいい就職先が無かったら、俺の料理番をやらないか?」
「俺が、料理番?」
示された就職先はなんだか誘惑が多い。
俺は別に贅沢が好きなわけじゃないし、食べて行ければいい。
慣れない場所で慣れない仕事をするよりは、親切なこの人の側で仕事をする方がいいかもしれない。
だがそれではおんぶに抱っこ。この人の善意にどこまで甘えるつもりだよ。
男たる者ちゃんと自立して生計立てられるようにならないと、いざこの人がいなくなったら路頭に迷うよ。
「あの、候補に入れとく程度で」
「遠慮しなくていいんだぞ。A級の冒険者ともなると、体調管理も必要ではあるし、ほとんどが旅暮らしだ。食事に多少気を使ってもいいんだが、俺はからっきしでな。見かねた贔屓の宿屋や食堂の人が料理を作って俺に持たせるほどだから」
自嘲気味にユーリスさんは笑うが、俺は半笑いだ。
体が資本のお仕事なのに、管理は適当ってダメじゃんか。
「あの、俺がついて行ける間は料理します」
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