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もしかしてこっちの世界って、祖父母と一緒に暮らす事ってないのかな。
「マコトは両親と死別でもしたのか?」
「え? いや、健在だとは思うんだけど。俺の両親は俺が小さい頃に離婚して、俺は親父に引き取られたんだけど仕事人間でさ。結局育児放棄状態になって、親父の祖父母に育てられたんだ。優しくていい人達だったよ」
俺にとってはもうどうでもいい話で、疎遠なんて当たり前すぎる。
むしろ今更干渉されるほうが嫌かもしれない。
それに、祖父母はとってもいい人だったんだから。
でもユーリスさんの瞳は気遣わしげに細くなる。マスターさんもそんな感じ。
湿っぽいのは苦手だから、俺は思いきり笑った。
「気にしないでよ。最初からこうだと、両親との縁とか本当に感じないし。それに、俺の家族は祖父母だよ。料理も裁縫も洗濯も掃除も、婆ちゃんが教えてくれた。爺ちゃんは仕事してたから、俺を養ってくれて上の学校まで出してくれて、しかもちゃんと貯金もしてくれた。もう、死んじゃったけどさ。でも、俺は本当に幸せだったよ」
ユーリスさんの手が伸びて、よしよしと頭を撫でられる。
俺はなんだか少しだけ、寂しいような気持ちがわいた。
「マコトは強いな」
「強い?」
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