【ユーリスサイド】 料理人マコト

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「ユーリスさん、あの子の登録が終わったら手放すのかい?」  マスターが「それは惜しい」という調子で俺に聞いてくる。  この点について、俺はわりと悩んでいる。  本心は惜しい。  料理が出来て俺の苦手な家事全般が出来そうな彼は旅に重宝する。  体力のなさが少し心配だが、クエストに連れて行くわけじゃない。  手前の町なりで宿に残して行くことだってできる。  だが善人の俺は、それを俺が判断すべきでは無いと言っている。  彼のステータスやスキルによっては、高収入の職に就くことも可能だ。  やりたい事もあるかもしれないし、今は無くても見つかるかもしれない。  俺の強引な誘いで彼の選択を狭めるべきではない。    結局俺は曖昧にマスターに笑いかけた。 「彼が俺の料理番をしてくれると言ってくれれば、俺は拒まないが。だが、彼には彼の思いや未来があるからな」 「ユーリスさんは少しいい人過ぎるね」  ふっと息を吐いて、マスターはそんな事を言った。  そうしていると不意に、いい匂いが漂ってきた。香ばしい匂いに、もう一つは肉の匂いか。  思わず腹の虫が鳴りそうな、食欲をそそる匂いだ。 「美味しそうですね」 「あぁ、本当に」  キッチンを覗くと、マコトはとても忙しそうに、そしてテキパキと働いている。     
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