【ユーリスサイド】 料理人マコト

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 小さな体で大きな鍋を移動させたり、揚げ物を作っていたり。  そっとキッチンに入り、周囲を見回す。  大量の野菜や肉を買い込んでいたが、それらが料理になっている。鍋の中は煮物らしい。  驚くべきは忙しく料理をしているにも関わらず、キッチンがそれほど荒れていない事だ。  使わなくなった器具は既に洗われて水気を切るように籠の中。シンクの中は綺麗で野菜の切りくずなどもない。  少し離れた鍋を見ると、野菜の切りくずが鶏肉の皮などと一緒に踊っている。  マコトは揚げた肉をガットに取っている。 「美味しそうだな」 「え?」  背後から手を伸ばし、揚がったばかりのものを摘まんで口の中に放り込む。  俺達は熱さには強いから、火傷なんて無様な事にはならない。  咀嚼して、溢れる肉汁と香ばしい醤油の塩みに笑顔になる。  とても美味しい。生臭みもしっかり処理され、柔らかい。揚げた肉は硬くなるのに。 「美味しい」  素直に感想を言うと、マコトはとても嬉しそうな顔で笑った。  なんとも無防備な笑顔だ。幼さすらも感じる彼の素直な反応は、正直に困る。  それでなくとも彼の匂いは好ましい。そのうえ愛らしい姿と素直な反応、礼儀正しく律儀で遠慮深く、更に料理が美味い。     
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