【ユーリスサイド】 料理人マコト

4/4
3291人が本棚に入れています
本棚に追加
/324ページ
 俺の求める要素を十二分に持っている彼はあまりに魅力的だ。  料理番ではなく、嫁に欲しいくらいなのだが…。  ふと浮かんだ欲望に、俺は静かに蓋をする。  彼は異世界からこちらに渡ってきたばかりで、しかも男と関係を持った事もなく、同性婚や妊娠に戸惑いや恐怖を抱いている。  そんな相手を騙すような方法で嫁に貰い、抱くような事はしてはいけない。  何より俺には、子が必要だ。  もしも彼をもらい受け、子が出来ねば彼が辛い思いをする。  周囲は彼を蔑むだろうか。子を成さない嫁など無能と言って、俺に他の者を宛がうだろう。  そうなれば、相手は不幸だ。  屈託無く笑みを向ける無防備なマコトは、俺のこんな思いを知るよしもない。  いい人で居続ける事が、おそらく一番なのだろう。  そして俺もまた、自分の考えに蓋をして封じ込めておくのは得意なほうだった。
/324ページ

最初のコメントを投稿しよう!