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「鐙、かけられるか?」
「え? あぁ、うん」
鐙に足をかけ、鞍に腕を伸ばす。一杯一杯でも届いた。
そうして足を踏ん張り腕で持ち上げてようやく、俺は馬の背に乗れた。
「人間にはユニコはでかすぎるからなぁ」
「ははは」と豪快に笑ったのは、この馬屋の主人だ。
ごつい体は筋骨隆々で、肌はこんがり小麦色。白い歯を見せて豪快に笑う50代くらいの人間さんだ。
「まぁ、しかし竜人族は普通の馬には乗れないから、仕方がないんだがな」
「そうなんですか?」
「おうよ。馬が怯えちまって乗せられないんだ」
そういうものなのか。まぁ、人の形をしながらも竜だしな。と、妙に納得した。
ちなみにこの馬屋には普通の馬も沢山いた。
「こいつの名はファイってんだ。美人だろ?」
「はい、とても。ファイ、よろしくね」
鞍の前に乗せられたから首とか触りやすい。
そっと恐る恐る手を伸ばして触れてみても、ファイはまったく嫌がらなかった。
温かい毛並みがとても気持ちよかった。
「では、王都まで連れて行く」
「よろしく頼む」
ふわりと鐙に足をかけて乗ったユーリスさんが手綱を引いて店主に言う。そうしてゆっくりと、ファイは歩き始めた。
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