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所属する群れに異常事態があって、混乱してはぐれる、もしくはこいつ以外が全滅したという可能性もある。
後者であれば厄介だ。
モンスターの住み分けられたテリトリーで異変があった証拠だ。
それは住まう人間や他の種族が起こしている可能性もあるし、元々ここにいるはずのないモンスターが突如出現した可能性もある。
厄介な事にならなければいいが…。
俺はフレイムハウンドにトドメの一撃を与えて倒すと、剣を引き抜く。
「まったく、人騒がせだ」
せっかくの穏やかな夜を騒がせる事態を苦々しく思いながら呟いた俺に向かって、マコトは駆け出してくる。
恐怖に震えたまま転がるように俺に抱きつく彼が、とても可哀想で胸が苦しい。
「もう大丈夫だ、マコト」
「ちが……」
俺は首を傾げる。
モンスターなら倒したからと、そういう意味で笑いかけたのだが、マコトは未だ震えながら「違うと」訴えている。
何か違ったのだろうか。
黒い濡れた瞳を見ても、俺には彼の心が見えない。
「怪我…」
「ん?」
「怪我、してな…」
その言葉に、俺の胸は熱く滾っていく。
まさか、怪我の心配をされているなんて思わなかった。こんなモンスターなど取るに足らないというのに。
なおもガタガタと震えながら俺の体を確かめるようにしているマコトが、愛しくてたまらない。
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