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巡る血の熱さと激しく突き上げるような衝動に、俺は細い体を強く抱きしめていた。
「平気だ、どこも痛くはないよ」
「よか……」
「有り難う、心配してくれて」
途端、ぽろっと溢れた涙を見て俺の理性は一瞬切れた。
逃がさないように抱きしめて、そのままキスをしていた。
マコトの唇は想像していた通り柔らかくて、その唾液は蜜のように甘い。
夢中で唇を吸い、舌を絡めて官能を誘った。
匂い立つ誘惑の香りが鼻孔をくすぐりクラクラする。血が沸騰するような熱など感じた事がない。
間近で見た黒い瞳が熱に濡れ、頬や目尻が上気している。
艶めかしく開く唇から、チラリと見える愛らしい舌。
幼い果実を刈り取るような背徳感に、俺はふと冷静になった。
「すまない、俺は!」
マコトは男とこうした行為を行う事に嫌悪があるはず。
いや、この蕩けるような表情からは嫌悪は感じ取れないが、それでも躊躇いがあるはずだ。
下手をすれば俺に対して恐怖を感じるかもしれない。
当然だ、好意を持っていない相手との性的な接触など、慣れた俺でも辟易するし、臆病ならば怖いと思って距離を取りたくなるだろう。
俺はそれが怖い。もしもマコトに避けられたら。そんな事、辛すぎる。
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