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猫耳のようだけれど、尖って凜々しい。尻尾もふさふさだ。赤みがかった茶色の髪と同じ色の耳と尻尾をした、50代中頃のちょい悪親父だった。
「何があったんだ、マスター」
「ユーリスか、丁度いい所に来てくれた。街道に、A級モンスターが出たんだ」
その言葉に、珍しくユーリスさんの表情が歪んだ。
「何が出たんだ」
「ティアマットだ」
側にいて、ユーリスさんが息を呑むのを俺は聞いた。
「それで、皆足止めをくらっていたのか」
「あぁ。宿屋は一杯だぞ」
「ここの上は?」
「空いてる。ただし、シングルだぞ」
「構わない」
「え? ユーリスさん?」
俺が声を上げたことで、ようやく俺の存在に気づいたらしい狼の獣人さんが視線を向けた。
「何だお前、恋人連れか!」
「恋人?」
「違う!」
ニヤリと笑う狼さんに反論するように、ユーリスさんが赤くなって否定している。
俺は首を傾げてしまった。
「お前が誰かを連れてるなんて初めてだろ。どこで拾ってきたんだ、そんな可愛い子」
「違う! 彼は異世界人で保護したんだ。これから王都に向かうんだ」
「異世界人?」
狼さんがカウンターから乗り出すようにズイッと俺に顔を向ける。そして、マジマジとみられた。
「へぇ、こりゃ珍しい! あぁ、気をつけろよ。お前さんくらい可愛いと危ないぞ」
「あの、いや…」
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