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ユーリスさんに鍵を渡し、俺はそのまま二階へと上がっていく。そして、割り当てられた部屋を開けた。
部屋の中はごく普通のシングルの部屋だ。簡素だけど使いやすい。シャワーとトイレも完備だった。
「ここに結界を張っていく。マコトが扉を開けなければ誰も入ってこられない。だが、開けてしまうと招き入れた事になるから気をつけてくれ」
「あの、ユーリスさんは…」
危険なモンスターを倒してくるのだろうか。怪我はしないだろうか。無事に戻ってきてくれるだろうか。
昨日の事を思い出す。俺は怖くなってガタガタ震えた。
俺は今ユーリスさんを失ったらどこにも行けない。この世界にひとりぼっちになってしまう。
思うと怖くて、震えてきた。
ユーリスさんの手が俺の頭を撫でる。優しく、穏やかに。
「今日は行かない。町に出て、マジックバッグを一つ買おう」
「あの…」
「君が作ってくれた料理をそっちに少し移しておく。それで食いつないでくれ。飲み物も買いためておこう。あと、お金も」
「あの!」
「一週間たっても俺が戻らなかったら、もしくは部屋の結界が消えたらカウンターにいた狼の獣人の所に行ってくれ。無骨だが、面倒見のいい人だ。俺からも言付けていく」
「そんな!」
それは、絶対はないってことだろうか。危険だって事だろうか。
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