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止めて欲しい、行かないで欲しい。
俺は駄々をこねるように首を横に振って腰に抱きつく。
どうして行かなきゃいけないんだ。そのうち、倒されてしまうのを待ったっていいじゃないか。どうしてそれをしちゃいけないんだ。
「行かないで」
呟くように出た俺の言葉に、ユーリスさんは困った顔で微笑む。
そしてとても優しく、頭を撫でてくれた。
「放っておけば被害が大きくなる。街道に出るなんて珍しいが、だからこそ大変だ」
「だからって…」
「人が死ぬばかりじゃない。人の流れも滞り、物流が止まる。大変な事になるんだ」
駄々っ子をあやすみたいにユーリスさんの手が背中を撫でる。
俺は、なかなか離れられない。
「約束する、必ず王都へ連れて行く。だから、今は離してくれ」
困らせてしまっている。それは分かっている。俺は何度か深呼吸をして、そっと腰を離した。
「戻ってきてくれますか?」
「あぁ」
「…それなら、お金はいりません。食べ物と飲み物だけ備蓄して、引きこもります。ユーリスさんが戻るまで、この部屋を出ません。ユーリスさんが戻らなかったら、俺ここで飢え死にします」
当てつけのように言うと困った顔。それでも頷いて約束してくれた。
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