3291人が本棚に入れています
本棚に追加
/324ページ
翌日、ユーリスさんはモンスター討伐に行ってしまった。
俺は部屋のなかで一日を過ごしている。本当に何もなくて、外で大変な騒ぎが起こっているなんて想像もさせない穏やかさだ。
でも、落ち着かない。俺は何度も外を見て溜息をついている。本を読んでいても頭に入ってこない。浮かんでいるのはユーリスさんの無事ばかりだ。
最近、夢を見る。うたた寝の時とかに見るのが最悪だ。
ユーリスさんがモンスターに殺されてしまう夢。
そんなのを見て、叫ぶようにして目が覚めてしまう。
俺はどうしたんだろう。
顔見知りもいない、勝手も分からない世界でひとりぼっちになるのが怖いのだろうか。だからユーリスさんに縋っているのだろうか。
優しくて、強くて、憧れてしまうような人なのにどこか可愛くて。美味しそうに料理を食べる姿は清々しくてちょっと可愛い。目が輝くんだ、美味しいと思うと。
「今頃、食べてくれてるかな…」
彼のウエストポーチには俺の作った料理がたっぷり入っている。
食べて少しでも元気になってくれるといい。俺の作ったものがあの人の力になってくれるといい。
「俺、なんか他に出来る事ないのかよ」
弱い自覚はある。体力も増えたりしてない。魔法…なんてどう使っていいか分からない。色んな事がまごついてしまう。
「俺の役立たず…」
何か一つでもあの人の力になれるなら、俺は今頃あの人の側にいたのかな?
最初のコメントを投稿しよう!