A級モンスター登場

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 三日が過ぎた。俺はとうとう怖くなってしまった。  強いモンスターだって聞いてたけれど、あの人が三日も帰ってこられないなんて。  もしかしたら、探すのに手間取ってるのかもしれない。意外と遠いところに行ってしまって、見つからないのかもしれない。そうであればいい。  状況が分からない俺は、とにかく祈るしかできない。  ゴトン!  扉の外で音がして、俺はビクッと大げさに肩を震わせた。  ドアの前を見ても何かがあるわけじゃない。暗い部屋の中は何の変哲もない。  けれど、そうじゃない。  ドアに近づいて、俺は何か液体のようなものが部屋に侵入してきているのに驚いた。侵入なんて大げさか。  誰かがドアの前で何かをこぼして、それが部屋の中にシミを作っている。そんな感じだ。  けれど次の瞬間、俺は驚いてドアから逃げた。  液体は僅かに煙を上げ始めたのだ。可燃性の液体だったんだろうか。 「うっ…げほっ! ごほっ!」  煙たい。喉が痛くなりそうだ。窓を開けても煙はどんどん増えていく。  でも、悲鳴が上がっているわけじゃない。火はまだ下に伝わっていない。  様子を見て、誰かに知らせないと。火事なら大変だ。本当に、大変なんだ。  開けるなと言われた。でも今は有事だ。俺は扉を開けて飛び出そうとする。  けれどその体は直ぐに何かにぶつかった。 「むぅぅ!」 「大人しくしろ」  相手が誰だとか、何人だとか認識する暇もない。俺は口に布を押し当てられる。吸い込んだそれが、薬臭い。そして途端にクラクラした。 ――ユーリスさん。  意識が強制的に揺れて力が入らなくなる。彼とは違うゴツゴツした腕が俺を受け止める。  俺はそのまま、意識を手放した。
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