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【ユーリスサイド】 罪と甘美な花の蜜(慰め)
宿に戻って、俺はマコトの体を綺麗にした。
タネヤドシの媚薬が肌に残っているだけで体は疼くはずだ。
意識がないままのマコトの体を抱きながら、中も指で綺麗に洗った。
綺麗に着せて、解毒薬を飲ませる。そして後ろにも解毒の薬を指に纏わせて塗り込んだ。
媚薬に犯された体は指の一本程度簡単に飲み込んでいく。
「っ」
強い匂いを放つのに、その気にはならない。奇妙な感覚に、俺はただただ罪悪感に押し潰された。
こんな事になるなら、側にいればよかった。
ギルマスに預ければ大丈夫だなんて、楽観的な考えなど持たなければよかった。
国際問題になってもいいから、竜化して飛び越えてしまえばよかった。
他国で竜人族が竜化するのはよほどの緊急事態か、危険域からの脱出以外は認められない。
敵意があると取られ、国際問題になりかねない。
ティアマットの子を連れて行ったのは、危険域からの脱出扱いになる。
だから問題なかったが。
「すまない…」
未だに体は熱を孕み、指先が触れるだけでヒクリと震える。
おそらく盛られた媚薬は純正のタネヤドシの媚薬ではなく、混ぜ物がされていたんだろう。より深い快楽を得るためにそのような薬を作る商人もいる。そういう薬は解毒薬でも効果が現れるのが遅い。
「すまない、マコト…」
苦しかっただろう、怖かっただろう。
部屋に煙が充満しただけでも怖かったはずだ。人族は炎だけでも死んでしまう。
炎を弾く竜人族の分厚い装甲もなければ、天人族のような全精霊への加護もない。魔人族のようにいかなる場所でも深淵の闇に逃げ込む能力もない。
人族は、全ての種族の中で一番弱い。
人族も獣人族も子の数は多いのだが、その分生命の危機も多い。
多少の炎でも死んでしまう、剣なども簡単にその体を貫く、数センチの水に顔を埋められるだけで死んでしまう。たかが二階から落ちただけでも死ぬ事があるんだ。
あまりに弱い。
マコトはそれを十分に理解している。だからこそ、怖かっただろう。
男に体を弄ばれ、意図していないのに熱を持つ自身を感じて怖かっただろう。
どれだけ叫んだのか。どれほど俺の名を呼んでくれたのか。
俺はそれに、応えられなかった。
柔らかな体に触れて項垂れて、俺はひたすらに謝っていた。
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