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竜の国へ
王都一日目が静かに過ぎる。
宿屋の一階で食事をして、お酒を飲んだ。
それでも俺の気持ちは晴れやかじゃない。
今後の事があまりに重くのしかかってくる。
俺のスキルは就職には適さない。しかも隠さなくちゃいけない。
ユーリスさんにはここまで連れてきてくれたけれど、これ以上は甘えられない。
何より俺はこの人の側にいても役に立たない。足手まといになったばかりだ。
「マコト、そんなに落ち込む事はない」
「でも…」
ここは贅沢なんて言っていられない。
明日もう一度市役所のお姉さんを訪ねて、住み込みで働ける場所を探そう。
料理店の住み込みの話も前向きに検討しないと。
「マコト」
「あっ、はい?」
肩を叩かれて俺はユーリスさんを見た。
何度か呼ばれていたのかもしれない。とても心配そうな顔をしていた。
「マコト、今後の話なんだが」
「あ…」
「もしよければ、もうしばらく俺と一緒に旅に出ないか?」
「え?」
でもそれは、ユーリスさんに利がない。
俺なんか養って、気遣っての旅なんてしなくてもいいだろう。
この人は強くて、基盤もちゃんとしてて、足手まといと一緒よりも一人の方が動けるのに。
「でも、俺…」
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