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【ユーリスサイド】 離したくない
マコトを連れて、祖国ジェームベルトへと向かっている。
マコトはずっと、何かを考えている。
何かを悩んでいるのは分かっている。
だが、何を悩んでいるのかが分からなければ俺にはどうしようもない。
聞けばいいのかもしれない。だが、微妙に聞かれる事を拒んでいるように思えるのだ。
竜の国の方が人族の需要は高い。好条件の仕事に就けるかもしれない。
そう唆して俺はマコトを連れてきた。
嘘ではない、人族は竜の国では人気が高い。小柄で器用で愛らしく、圧迫感がないからだ。
だが俺は、マコトに仕事なんてさせる気はない。
俺はマコトをこの国で口説き落としたいのだ。
まずは屋敷に連れて行って、街の案内なんかをしよう。屋敷の中でお茶をしたり、俺の話をしたりしよう。
そうして距離を詰めていきたい。
住む場所も俺の屋敷にしたい。家を借りるにはお金もかかる。
マコトは金銭のやりとりにとても敏感で、出来れば借りるという事をしたくはないのだろう。
だからこそ、使っていない部屋があるから使ってくれていい。
その代わりに、手料理を食べさせてもらいたいとでも言えば納得してくれるはずだ。
なんとも小賢しい。思いながらも止められない。恋は盲目とは良くも言ったものだ。無縁だと思っていた俺が、いつの間にかこんなにも必死だ。
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