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【ユーリスサイド】 絶望の咆吼
マコトの姿が消えたと知らされたのは、翌日の夕刻、もう空が薄い闇に包まれる様な時間だった。
「申し訳ありません! 散歩をしたいと言われ、それで…」
メイドがそう言って震えながら謝罪をしているのも、俺には聞こえていない。
息苦しいほどに鼓動が強く鳴り響く。呆然としたまま、動けない。
この屋敷は俺が王太子となってから長い時間を過ごしている。この屋敷の者が彼に危害を加えるなんてことはあり得ない。
ならば、マコトは自らの足で出て行ったんだ。俺が傷つけたから、彼は…。
「部屋に、これらが置いてありました」
側近のジェノワが、マコトの部屋にあったという荷物を持ってきた。
買ったマジックバッグの中には、ほとんどの服とダガー、料理、お金…彼に渡した全てが入っている。
そして、俺が渡した笛もそこにはあった。
思わず胸を握った。苦しくて上手く話せない、震えていて体を立てていられない。
「今、この屋敷の周辺を探しています。町の方にも人をやって聞き込んでいますので」
「俺は、森を探す…」
「え?」
ジェノワが驚いた様にしている。だが俺は、フラフラと歩き出した。
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