9. それぞれの決意

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「わかってるよ、困らせてるよね。でも俺も男だし、気に入った女の子をどうにかして振り向かせたいって思うじゃん。それとも、やっぱりそういう相手がいるの?」 「好きな人はいます」  ストレートに聞かれ、志穂は一瞬迷ったが、はっきりと答えた。  気のある素振りはしていないつもりだけれど、期待を持たせてもいけないと思った。  太一の心がほかの女性にあろうと、この思いは変わることはない。彼のことを思えば思うほど、この胸は苦しくなる。  それでもあきらめることはできず、今も太一を追い求めてしまうのだ。 「その人とつき合ってるの?」 「それは……」 「つき合っていないならチャンスはあるかな?」 「ごめんなさい。今はその人のことしか考えられなくて。たぶんこの先も宮下さんのことは……」  志穂はそこまで言って、うつむいた。  さすがにこれ以上は面と向かって言いにくい。 「あー、ごめん。それ以上は言わなくてもいいから」  宮下も苦笑しながら志穂を気遣った。  それに全部聞かなくても察しがつく。というより、今ここで彼女の口から聞きたくなかった。仕事中にとっさに告白してしまったことを後悔すらしていた。  志穂もそれ以上なにも言わなかった。宮下が予想外にショックを受けているのを見て、言いすぎたのかもしれないと反省する。  けれど宮下は弱さを見せることなく、「行こうか」とやさしく言うと、飲み終わったカップをゴミ箱に投げ入れた。  志穂は、「はい」とうなずいて、残りのアイスココアを飲み干した。
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