9. それぞれの決意

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「圭人、駅前でしばらく時間をつぶしていて。仕事の終わる時間が八時半なの」 「そんなに遅いの? 仕事なんてサボっちゃいなよ」 「そんなことできるわけないでしょう。子どもみたいなこと言わないで」 「こういうときばっかり年上を気取るんだな。三つしか違わないだろう。それに僕は二十歳(はたち)だよ」 「そういう話をしてるんじゃないの。わたしは今仕事中なの。早く戻らないといけないのに……」  志穂はあきれたように言った。  すると見かねた宮下が声をかける。 「志穂ちゃん、やっぱり車で送るから。よかったら、そっちの彼も一緒にどうぞ」 「でも……」 「いいから、遠慮しないで」  宮下がそう言うと、志穂は迷いながらも従おうとした。  けれど圭人はその場を動こうとしない。 「駅まで乗せてもらおう」 「僕はいい。歩いていく」 「圭人……」 「駅前のホテルにいるから、仕事が終わったら電話して」  圭人は投げやりに言うと、さっさと歩き出す。  見慣れた背中が小さく弱々しく見えた。慣れない場所なのにひとりにさせてしまうことが忍びなくて、志穂は圭人の後を追った。 「待って!」  うしろから声をかけても圭人は歩みを止めない。
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