9. それぞれの決意

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「志穂!」 「志穂ちゃん!」  圭人と宮下のふたりが駆け寄った。  けれど志穂はどちらの手も取ることはなかった。  ストッキングは無様に破れ、膝からは血が滲み出ていたが、志穂は、「大丈夫」となんとか笑顔を作った。 「ごめん、僕のせいだ」  圭人は泣きそうな顔で志穂を見つめる。 「ううん、そうじゃないよ。圭人はなにも気にすることないから」 「手あてしたほうがいいな。傷口をちゃんと洗わないと」 「宮下さん、すみませんが、わたしと圭人を駅前まで送っていただけますか。たいしたケガじゃないので、向こうで手あてします」  宮下は傷の程度を確認し、「わかった」とうなずいた。  圭人も観念したようで、反論することはなかった。  それから三人で駐車場に向かい、志穂と圭人はリアシートに座る。  圭人は責任を感じてずっと暗い顔をしており、言葉数も少なかった。 「たかが、かすり傷ぐらいで。圭人が落ち込むことないんだって」  志穂はハンカチで膝を押さえながら言った。 「でも痕が残るかもしれない」 「残らないよ。小さい頃なんて、これくらいのケガはしょっちゅうだったよ。圭人だってそうでしょう?」 「……うん。でも志穂は女の子だし」 「大袈裟なんだよ、圭人は」  血は止まったようだった。志穂は「平気だから」と、膝にあてていたハンカチをたたみ直してポケットにしまった。
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