9. それぞれの決意

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 職場に戻ると、出入口で外出しようとしていた長谷部にばったり出会った。  向こうも志穂に気がつき、足を止める。 「お出かけですか?」  長谷部の大きな手提げバッグが目に入り、志穂のほうから声をかけた。 「ええ、商工会議所に行ってくるわ」 「今からなんて大変ですね」  販売企画部では商工会議所や公民館でも出張講習を行っている。おそらくその打ち合わせだろうと志穂は思った。 「それより、そのケガ、どうしたの?」 「これはちょっと転んでしまって」  志穂は慌てて膝を隠そうとするが、今さら無意味だと思い、あきらめた。 「それで宮下くんに送ってもらったのね。二階の窓から見えたの」 「はい、たまたま会って。それで出かけるついでに乗せてもらいました」  見られていたのか。バツが悪いなと思いながら答えた。 「たまたまねえ……」 「本当ですって」 「そのわりにはさっきの別れ際、ずいぶんと名残惜しそうだったけど?」 「そんなんじゃないですから!」  妙な視線を送られたので、ぶるぶると首を振って否定する。  どうやら圭人がいたことには気づいていないようだった。
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