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もっと早くこういう関係になりたかった。
けれど、お互いに自分のことばかりだったのも事実。
きっと、どうしようもなかったことだったのだろう。
「気をつけて帰ってね」
「圭人も」
別れ際、タクシー乗り場の近くで最後の会話を交わす。
これで本当に最後なのかと思ったら志穂の目に熱いものがこみ上げてきた。
圭人はそんな志穂の頬にやさしく手で触れると、こめかみに唇を寄せる。志穂はその瞬間だけ目を閉じた。
そして唇が離れ、間近で見つめ合いながら、圭人が「ばいばい」とその手を離し、ふたりは別れた。
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