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志穂がリビングのラグに腰を下ろすと、太一はキッチンに立った。
冷蔵庫から出した緑茶をグラスに注ぎ、それをリビングのテーブルに置いた。
「冷たいのでよかった?」
「うん、ありがとう」
太一は志穂の向かい側に座り、あぐらをかく。
部屋を見まわすと、コンビニの袋や脱ぎ捨てた服がちらほら見えた。
きれい好きな太一なのにちらかっているということは、部屋を片づける暇もないほど忙しいということだ。
それなのに今日は志穂から連絡を受け、仕事を早く切り上げてきてくれたのだろう。帰ってきたばかりなのか、太一の服装もワイシャツとスラックスのままだった。
この部屋を見る限り、彩の影はない。彼女がこの部屋には出入りしていないのはあきらかだった。
「先に言っておくけど、今日は彩さんのことを責めるつもりで来たんじゃないの。そんな資格もないと思ってる」
「資格?」
「今まで太一との関係を曖昧にしてたわたしも悪いわけだし」
「それで?」
「このままじゃだめだって思ったから、はっきりさせようと思って」
「つまり俺とはもう会わないってこと?」
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